ホーム > 褒賞・外国人留学生奨学金 > 令和6年度 褒賞受賞者
この度は、「安田・阪本記念賞」という名誉ある賞の受賞者に選考していただき、リディアオリリー記念ピアス皮膚科学振興財団小川理事長をはじめ財団関係者の皆様、選考委員会の皆様に心より感謝申し上げます。
私は、広島大学医学部在学中に小川秀興先生(当時は順天堂大学皮膚科学講座教授)の特別講義を拝聴して皮膚科学研究に興味を持ち、皮膚科医の道に進みました。広島大学在籍中は山本昇壮皮膚科学講座教授、島根大学在籍中は出来尾哲皮膚科学講座教授に、研究の基礎的手技の習得ではキール大学のChristophers教授及びSchroeder教授、広島大学薬学部の杉山教授、広島大学病院薬剤部長の松尾教授にご指導いただきました。このようなご指導のもと広島大学在籍中はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、肥満細胞に関する基礎的研究を、島根大学在籍中は食物アレルギー、重症薬疹など主として皮膚アレルギー領域での臨床研究を行なって参りました。殊に、成人小麦アレルギーの主要アレルゲンであるオメガ5グリアジンの特定とリコンビナントペプチドを利用した小麦アレルギー診断法の実用化、加水分解小麦アレルギーの発見とその病態解明、マダニ咬傷に起因するアルファGalアレルギーの病態解析では、一定の社会貢献をすることができました。
広島大学及び島根大学在籍中には研究に没頭する日が続き、家のことは妻に任せることが多くありました。殊に島根大学在籍中は単身赴任でしたので2人の子供の世話も妻任せでした。長男は高校在学中しばしば羽目を外すことがあり、校長先生からお呼び出しをいただくことも数回ありました。このような時、校長先生に謝りに出向くのが私の役目でした。また、長女が家出して関東に住んだことがありましたが、お迎えが私の役目でした。幸い長男、長女とも大学進学後は無事に成長し、それぞれ医師、薬剤師として働いてくれています。私は、島根大学退職後、長男が開設したクリニックに雇われ医師として勤務させてもらっています。
今日まで充実した人生を送ることができ、このような名誉ある賞の受賞者に選考されましたのは、ご指導をいただいた先生方、研究にご協力いただいた研究者や患者の皆様、大学在籍中切磋琢磨させていただいた教室員の皆様、そして陰ながら支えてくれた家族のお陰と感謝する日々です。
1982年 | 広島大学医学部卒業 |
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1982年 | 広島大学医学部皮膚科学教室入局・医学部附属病院医員(皮膚科) |
1983年 | 厚生連広島総合病院皮膚科医師 |
1984年 | 広島大学医学部附属病院医員(皮膚科) |
1986年 | 西ドイツ キール大学皮膚科研究員 |
1990年 | 広島大学医学部皮膚科学講座助手 |
1996年 | 広島大学医学部附属病院講師(皮膚科) |
2001年 | 広島大学医学部皮膚科学講座助教授 |
2002年 | 島根医科大学皮膚科学講座助教授 |
2004年 | 島根大学医学部皮膚科学講座教授 |
2020年 | Visiting Professor of Mongolian National University of Medical Sciences (MNUMS) 併任 |
2021年 | メディカル工笑副社長、島根大学名誉教授 |
2024年 | エイル裾野クリニック医師 |
2015年 | 第45回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会主催 |
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2018年 | 第70回日本皮膚科学会西部支部学術大会主催 |
2018年 | The 10th International Congress on Cutaneous Adverse Reactions 主催 |
1989年 | The Herbert Herxheimer International Scientific Award 1989 |
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1996年 | Award in the First Joint Meeting of the Japanese and Canadian Societies for Investigative Dermatology |
2023年 | Master of Dermatology (Maruho) |
この度、令和6年度の小川秀興賞に選出していただき、大変に光栄です。長年、皮膚科のケラチン、ケラチナイゼーションの研究者を支援してこられた本賞を賜ることができ、また同門の坪井良治先生、眞鍋求先生や池田志斈先生らと共に、受賞者の一覧に名を連ねられたことを大変誇らしく思っております。
私は1987年に順天堂大学を卒業後、すでに全国的に注目を浴びていた母校の皮膚科学講座の門を叩きました(主任、小川秀興 教授、当時。現 学校法人順天堂理事長)。翌年には髙森建二先生(助教授、当時。現 学校法人順天堂理事)の元で、大学院生としての研究生活をスタートさせました。主に表皮角化やバリア機能形成に関連するトランスグルタミナーゼ、スルホヒドリールオキシダーゼなど酵素の研究をイロハから教えて頂きました。酵素の失活を防ぐために実験は-4°Cの低温室で連日、長時間に亘って行われましたが、免疫応答が低下するためか、よく風邪をひいていました。また、髙森先生は「研究ではなるべく多くの関連学会への出席や発表を通じて、貴重な意見を頂き、ディスカッションの場を得ることが大切」という信念で、多くの発表のご指導を賜りました。現在でも順天堂大学浦安病院内にある環境医学研究所で変わらず、かゆみ研究の陣頭指揮をとられています。
皮膚科医になって7年目には、小川教授のご厚意で海外留学支援の奨学金を得て、テキサス州ヒューストンのベイラー医科大学細胞生物学(主任、DR Roop教授)に留学させて頂きました。帰国後は角化異常症のモデルマウスの作成、同時に皮膚科外来に角化症の専門外来も開設させて頂き、ネザートン症候群を始めとした稀少な先天性魚鱗癬の症例の病態解析に従事しました。2002年には、本研究と臨床の功績により母校の同窓会より、学術奨励賞を頂くこともできました。また、この頃から現在に至るまで、角化症研究会の事務局長兼、世話人の1人として、微力ではありますが尽力させて頂いております。
2007年からは、順天堂大学浦安病院の皮膚科教授を拝命しました。先天性角化症の中でもネザートン症候群はアトピー性皮膚炎の発症機序との関連がある疾患であるため、現在は併設されている環境医学研究所で、大学院生と共に特にその治療についての検討を行なっており、病態に基づいた生物製剤やJAK阻害剤などの投与が皮膚の免疫・アレルギー反応に与える影響、とくに難治性の痒みに与える影響を解析したいと思っております。
また、浦安病院に異動してからサブテーマとして始めた美容皮膚科は、今や皮膚科医の重要なジャンルの1つとなり、近年ではシミやシワの発症機序も明らかとなって、理に適った治療(エビデンス)が重要視され、角化異常症の分野と同様にサイエンスに基づいた治療、安全性の高い治療が社会的にも求められる時代となっています。本年からは、日本美容皮膚科学会(JSAD)、日本皮膚科学会指導専門医委員会、日本レーザー医学会などで役職を拝命していますが、特にJSADは安田利顕先生(東邦大学教授、当時)が中心となって1987年に発足した日本美容皮膚科研究会に遡ります。それ以外にも、私が役職を頂いている日本小児皮膚科学会、日本香粧品学会なども安田先生がその設立者とのことで、御財団とのご縁も感じております。
末筆となりましたが、賞とともにご支援を賜りましたことを心より感謝申し上げるとともに、御財団の益々のご発展を祈念いたします。
1987年 | 順天堂大学医学部卒業 |
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1988年 | 順天堂大学大学院医学研究科 皮膚科専攻 入学 |
1992年 | 順天堂大学大学院医学研究科卒業、医学博士 |
1992年 | 順天堂大学医学部皮膚科学講座 助手 |
1993年 | 日本皮膚科学会専門医 |
1995年 | 米国テキサス州ベイラー医科大学皮膚分子細胞生物学 留学 (Post Doctoral Associate) (主任:Dennis R Roop教授) |
1998年 | 米国テキサス州ベイラー医科大学 皮膚科 (Visiting Assistant Professor 併任) |
1998年 | 順天堂大学医学部皮膚科学講座 臨床講師 |
2000年 | 順天堂大学医学部皮膚科学講座 医局長講師 (医局長幹事) |
2002年 | 順天堂大学医学部皮膚科学講座 講師 |
2002年 | 明治薬科大学大学院薬学研究科 非常勤講師 |
2005年 | 静岡県沼津工業技術センターバイオ技術客員研究員 |
2005年 | 順天堂大学医学部皮膚科学講座 助教授 |
2007年 | 順天堂大学医学部附属浦安病院 皮膚科学教室 教授 順天堂大学大学院医学研究科 皮膚科・アレルギー学教授 (併任) |
2009年 | 順天堂大学医療看護学部皮膚科教授 (併任) |
2018年 | 順天堂大学環境医学研究所寄附講座(所長:髙森建二教授) 抗加齢皮膚医学研究講座([株]ファンケル)教授(併任) |
1995年 | 内藤記念海外留学奨学金 (先天性表皮水疱症のVII型コラーゲン遺伝子変異に関する研究) |
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1999年 | 日本皮膚科学会基礎医学研究費(葉状魚鱗癬の疾患遺伝子に関する研究) |
1999年 | 難病医学研究海外派遣研究助成金(Sulfhydryl oxidaseの遺伝子変異に関する研究) |
2002年 | 順天堂大学同窓会学術奨励賞(先天性角化症の病態解明と治療への展望) |
2020年 | The Best Doctors in JapanTM 2020-2021.(ベストドクター社,2020-21年) |
2022年 | The Best Doctors in JapanTM 2022-2023.(ベストドクター社,2022-23年) |
2014年 | 第32回日本美容皮膚科学会総会・学術大会 |
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2022年 | 第33回日本レーザー治療学会総会・学術大会 |
2025年 | 第89回日本皮膚科学会東京支部学術大会(予定) |
2026年 | 第47回日本レーザー医学会総会・学術大会(予定) |
2027年 | 第48回水疱症研究会(予定) |
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